2021年8月期のトーセの成長戦略とデジタルエンタテインメント業界の未来
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で世界的に経済が停滞する中、活況を呈しているゲーム業界。ゲームソフト・モバイル開発が主力事業のトーセではこれからどんなコンテンツを創出し、組織をどのように変えようとしているのか。渡辺康人社長に聞いた。
- 新型コロナウイルスの影響も踏まえ、御社を取り巻く事業環境について、どのように認識されていますか?
- 新プラットフォームへの対応力強化に取り組む中、在宅勤務への切り替えもスムーズに進みました。
次世代ゲーム機の登場やクラウドゲームサービスの拡大を踏まえ、家庭用ゲーム開発では、それらへの対応力向上に迅速に取り組みました。一方、モバイル開発は前期に配信を開始した複数の大型タイトルが好評で、現在はより魅力的なユーザー体験を提供するために新たな仕掛け、イベントを投入しているところです。
開発環境面では、新型コロナウイルスの感染拡大以降、すべてのスタジオで出勤率を調整し在宅勤務を推進しました。本格的な導入は初めてなので、色々な意見が出ましたが、社員が前向きに取り組んでくれたことでメリットとデメリットが明確になりました。
- 2021年8月期の取り組みについて教えてください。
- 『中期経営ビジョン NEXT 2021』に基づき企画力と技術力の向上による競争力強化と開発者に寄り添った組織改革をめざします。
中期経営ビジョンで明示した戦略をさらに推し進めます。事業面では研究開発力・企画開発力のさらなる強化に取り組んでいきます。特に家庭用ゲームでは、メーカーの要望が高度化する中、欧米の開発会社が緻密で複雑な大型コンテンツを続々と手がけていますので、企画力と技術力で競争力を高めていきます。
組織面では2つあります。1つはフラット化の推進。開発の高度化・複雑化により、従来の開発スキルや開発マネジメントでは解決できない課題が発生することから、開発スタッフの課題解決力を高めるとともに、誰もが同じ方向をむいて課題に取り組める風通しのよい環境を整えることが不可欠です。コミュニケーションロスをはじめとする在宅勤務特有の課題については、ITツールの活用や開発工程ごとに手順を見直すなど、創意工夫によって解決できると考えています。また、開発スタッフが組織の中で自らの役割を認識し、自発的に行動に移していくことも大事です。組織変更はあくまでそのための土台づくりです。ここからさらに、各スタジオの責任者と会話し、開発現場の実情を正確に把握した上で開発スタッフがより自発的に行動するように働きかけていきます。
もう1つは人事・評価制度の改革です。社員一人ひとりが理想的なライフプランを構築し、誰もが個性と能力を生かしてキャリアアップできる環境と制度を整えます。そのために、従業員満足度調査を実施し、その内容をもとに改革を継続しています。すべての社員に「トーセの成長に貢献したい」と思ってもらえる組織にする。それが2021年8月期の最大の目標です。
- 株主の皆様にメッセージをお願いします。
- あらゆるものがデジタル化する社会で変化を恐れずにチャレンジを続けていきます。
デジタル技術はゲーム、音楽、映画など、あらゆるコンテンツ製作の現場を変え、業界の勢力図やセオリーを塗り替えてきましたが、ゴールはありません。仮想空間と現実世界の融合技術は今後も進化を続け、3年後、5年後にはゲームクリエイターの活躍の場がさらに広がっているでしょう。しかし、ゲームに固執していると、あっという間に取り残されてしまう。そんな時代がすぐにやってきます。だからこそ私たちはチャレンジを続けていきます。もちろん、株主の皆様への還元もしっかり行ってまいります。株主の皆様におかれましては、当社の企業活動に引き続きご理解を賜りますとともに、今後も一層のご支援のほどよろしくお願いいたします。