2024年8月期 特集

2024年8月期 第2四半期 特集
 当社グループでは、2つの方向から、AIに関する研究開発を推進しています。

基礎的な研究

 強化学習とは、AIのモデルが、特定の環境の中で「行動」しその行動の結果に応じて「報酬」を得る、という試行錯誤を繰り返すことによって、目標達成のための最適な行動を学習していく仕組みです。これは人間が経験から学ぶ過程に似ており、単に正解を覚え込む学習とは異なります。
 AIモデルの強化学習は、ゲーム開発での応用が期待されています。例えば、AIが多様なシナリオでゲームを繰り返しプレイすることで、ゲームの最適な設定や改善点を見つけ出すことが可能になります。
 当社では、AIが強化学習する環境の構築や、学習を進めるための手順やアルゴリズム(問題解決のための具体的な計算手順)の選定を行っています。また、得られた学習結果の評価・分析(レビュー)を通じて、学習プロセスの効率化を図り、ゲームの開発に適したAIモデルを作成するための知見を積み上げています。

ゲーム開発での実用面の検証

最適なAIツールの検討

 ゲームの開発業務において、AIツールを活用して効率化を図るための検証を進めています。例えば、コードレビュー(プログラムの品質やエラーをチェックする作業)や、多数のパターンが必要となる画像の生成など、それぞれの業務に最適なAIツールの検証や検討を行っています。

AI活用による技術資料データベースの整備

 当社は、これまでに多数のデジタルコンテンツを開発してきたことから、膨大な技術資料が社内に蓄積されています。これらの資料をAIに学習させることで、資料の分類やパターン化、データに基づいた予測を行い、当社の知見を今後のプロジェクトに効率的に活用することを目指しています。例えばゲームの企画段階では、AIがゲームの特性に応じた必須の要素や最適な開発手法、予測されるリスクを提案することで、企画プロセスがより効率的に、よりスピーディになることが期待されます。

基本方針と注力している施策

 当社グループの使命である「より良い製品とサービスを社会に提供し、健全で豊かな社会の実現に寄与する」を実践し、持続的に事業を成長させていく最も重要なエンジンのひとつが、"人的資本"です。人的資本の増大と資本効率の最大化を進めることが、当社グループの成長戦略の要のひとつであり、それは従業員のエンゲージメントを向上させることで実現されていくと考えています。当社が取り組んでいる、従業員のエンゲージメント向上のための主な施策をご紹介します。

ダイバーシティとインクルージョンの推進

 当社グループの成長に欠かせない創造性や、イノベーションを生み出すのは、多様な視点です。2つの方向から、ダイバーシティとインクルージョンを推進しています。

取り組みの例:全従業員向け「世代間の違いを理解するセミナー」を実施しました。

 毎年30人前後の新卒入社者がいる当社では、若手従業員の比率が高く、彼らの視点やバイタリティはより良い開発のカギです。団塊ジュニア世代、ゆとり世代、Z世代...、それぞれのバックグラウンドを互いに理解し合い、尊重し合ったコミュニケーションで一層の相乗効果を生み出すことを目指して、実施しました。

自律的に成長できる体系づくり

 当社グループが属するゲーム業界やデジタルコンテンツ業界では、技術進化やトレンドの変遷がとても速く、新しいスキルや知識を学び続けることが求められます。

取り組みの例

①オンライン教育プラットフォームを活用して、継続的な学習を奨励しています。中間層の従業員を対象に、ビジネススキルを診断するテストを実施し、結果をフィードバック。次にどのような学習をするのがよいかのヒントになります。

②若手従業員の早期戦力化が企業価値の向上に直結するため、OJTを中心とした実践的·専門的なスキル·知識の早期習得を強化しています。
 ┗育成担当者向けに研修を実施しています。

健康経営の推進

 厚生労働省の調査によると、情報通信業はメンタルヘルスの不調により休職や退職した労働者の割合が最も高くなっています。そのような状況を理解し、従業員のウェルビーイング(心身の健康と幸福感)向上を目指し、安心して働ける職場の提供に努めています。

取り組みの例

①定期的なストレスチェック
②メンタルヘルスケアの支援プログラム導入
③ストレス管理に関する研修の実施

 近年ゲーム開発は大型化・複雑化が進む一方であり、開発期間も長期化しています。関わるスタッフも非常に多く、膨大なコストが投入されます。そのためトラブルが発生した際の損失も大きくなる傾向にあり、リスクも高まっていることから、プロジェクトを適切に管理し、慎重に進行することが求められます。当社ではこれまで、プロジェクト管理手順の標準化・文書化に取り組み、確認事項や工程の抜け漏れ・重複、また手戻り等がないように、プロセスの効率化を進めてまいりました。しかしながら、2024年8月期には不採算となった案件や、開発の中止や失注によって大きな損失が発生したことから、そのような事態を防止するために、プロジェクトマネジメント支援室を2024年9月より設置しました。損失防止に加え、プロジェクト管理を適正化することで、開発プロセスや成果物の質を向上させ、顧客満足度の向上を目指してまいります。

プロジェクト管理で重要な要素

①品質管理 ユーザー満足度を高めるために、早期からの不具合や不整合の定期的なチェックと対応が肝要。
②スケジュール管理 ゲーム開発にはステップが多く、設計、デザイン、実装、テストなどが複雑に絡み合う。スケジュールを明確に立て、進捗を管理することが納期達成にとって必要不可欠。
③リソース管理 開発チームは、プランナー、プログラマー、アーティスト、サーバーエンジニア、サウンドクリエーター、QAテスターなど、異なる専門分野の人々で構成される。限られたリソースの効果的な配分が、プロジェクト全体の効率を高める。
④予算管理 正確な見積もりと進捗の管理で、予算超過を防止。コストと品質のバランスを適正に保つことが重要。
⑤リスク管理 技術的な問題や、遅延、市場の変化など様々なリスクを予測し、事前に対策を講じる。リスクの早期発見と適切な対応が失敗を防ぐ。

プロジェクトマネジメント支援室の役割

 開発を進めているプロジェクトチーム以外の客観的な視点から、主に品質と進捗をモニタリングし、指導や支援を行います。