2022年8月期 特集
2022年8月期の振り返りと今後の取り組みについて渡辺康人社長に聞いた。
- 2022年8月期を振り返ってください。
- 複数の大型案件を着実に進行させたとともに、重点施策にもとづく各種戦略活動もしっかりと実行できました。
家庭用ゲームソフト開発では、人気タイトルを含む複数の大型案件を着実に進行させました。2022年12月にお客様より発売が予定されているものもありますので、楽しみにしています。悔やむべき点としては、スマートフォン向けゲーム開発において、開発費が想定を超える事態が発生いたしましたが、このゲームの開発を担当していたプロジェクトチームは、その後の案件で挽回を図っており、お客様から新たなご依頼・ご要望もいただけております。
重点施策は3つ、取り組みました。1つ目は「大規模・高度化する開発に対応した開発体制の充実・強化」。研究開発推進室とスタジオの技術開発チームが連携し、ハイエンドゲーム機や開発ツールである「Unreal Engine 5」などの研究・検証を進め、成果をドキュメント化して社内に展開しました。その結果、「プレイステーション5」向け新規ゲームの開発案件を、スムーズに立ち上げることができました。また他のスタジオでは、VR(仮想現実)ゲーム機の検証と、3Dアート技術の強化を2021年8月期までに進めていましたが、2022年8月期にはそれらの成果を融合し、VRゲームの新規開発案件の獲得につなげることができました。
2つ目は「成長性の高い事業と様々なIPを活用した事業への取り組み」。メタバースやNFTに関連した開発技術の検証を進めるとともに、多方面に商談の種まきを行いました。
そして3つ目が「人事・教育・採用の改革の継続」。2021年8月期までに、報酬制度と評価制度のテコ入れをしてきましたので、2022年8月期は教育制度の充実に向けて準備を進めました。
- 現在の事業環境をどう捉えていますか。
- 足元の家庭用ゲームソフトの開発需要は堅調であり、今後拡大が期待されるプラットフォームとしてクラウドやPCなどにも注目しています。メタバースやNFT関連、システムインテグレーション事業でもチャンスは拡大しています。
「Nintendo Switch」や「プレイステーション5」を中心に、家庭⽤ゲーム機関連の市場は堅調に推移していると考えています。ただし、半導体不足や物流過密によるゲーム機の供給量の不足や、「プレイステーション5」の値上げなど、ユーザーがゲーム機を入手しにくい状態となっているのも事実です。
一方で、クラウドやPCなどのプラットフォームへの期待も高まっており、ユーザーの拡大が見込まれます。また海外を中心に、VRゲーム機の普及も進んできています。
メタバースやNFT関連では、Web3.0やVR、AR(拡張現実)などの新しい技術の加速と相まって、世界中のあらゆる企業が可能性を画策しています。
AIやIoTなどの技術も進歩を続けており、高まるDXのニーズに伴ってシステムエンジニアリング技術への要望が増しています。
- 2023年8月期以降の取り組みについて聞かせてください。
- ハイエンドな技術を獲得できる開発案件や新規性のある案件に優先して挑戦します。また、業務品質の向上と、人事制度における報酬・評価・教育の好循環実現に向けても取り組みます。
上述のようなゲーム市場の事業環境を踏まえ、今後、既存技術で比較的簡単なゲーム開発をメインで扱っているだけでは、次々に新しくなるコンテンツ需要に対応していくことができなくなると考えています。そのため、今後は重点アクションのひとつとして、先進的でより高度な開発技術へ挑戦するために、ハイエンド開発技術を要する案件や新規性のある案件に優先して取り組みます。メタバースやNFT関連では、連携がおもしろそうな多様なビジネスパートナーをみつけ、新しい付加価値の創出を模索します。引き続き多方面にアプローチするとともに、関連技術の検証を進め、次の柱の事業のひとつとなることを目指してまいります。システムインテグレーション事業については、2022年8月期に自社の業務システムを開発したことで、バックオフィス業務の省力化・効率化に関するノウハウの上積みが進みましたので、そのBTDスタジオを中心に、ゲーム開発技術とシステムインテグレーションの融合を進め、取引を拡大していきます。
2つ目の重点アクションとして、業務品質の向上に取り組みます。2021年8月期と2022年8月期には、スマートフォン向けゲームの開発過程で大規模な改修作業が発生してしまい、大きな損失が出てしまいました。開発工程の標準化を拡大し上流工程の効率化を行うとともに、下流工程での開発事故やヒューマンエラーを防ぐ仕組みづくり、マネジメント視点を持つスタッフの育成などによって、取りこぼしや損失を撲滅します。また、バックオフィスのDXもさらに推進していきます。
3つ目の重点アクションは、人事にまつわる好循環の実現です。これまで進めてきた報酬制度と評価制度の改革に加え、2022年8月期には教育制度を充実させてきました。報酬・評価・教育の基盤が整ったことで、従業員のスキルアップ→人事評価の向上→評価に伴う給与の上昇→業務やスキルアップへのモチベーション向上、という好循環を目指してまいります。
- トーセのサステナビリティについて聞かせてください。
- 人財と企業がともに成長を続けていくための仕組みづくりと、消費電力の低減に貢献できる技術の獲得を目指します。
当社は「永遠に続く会社づくり」を経営理念に掲げ、以前から持続性を重視した経営を行ってまいりました。そして「地球のココロおどらせよう。」をスローガンに、創業地である京都の文化や芸術を「ココロ」として受け継ぎながら、多様なデジタルコンテンツやサービスを創出し、将来にわたって人々の日常を豊かにすることに貢献したいと考えています。
サステナビリティに対する取り組みは様々ある中で、当社が特に注力するのは、事業の根幹である人財と企業がともに成長を続けていくための仕組みづくりです。
また、メタバースやIoTが加速するにつれ、電力消費の増大がすでに大きな社会問題のひとつとなっています。デジタルコンテンツの開発会社として、設計段階から電力消費量に配慮するために、社内でも意識の転換に取り組んでまいります。
トーセのサステナビリティ基本方針
当社は「永遠に続く会社づくり」という経営理念のもと、企業活動を通じ、将来にわたってより良い社会、持続可能な社会の実現に寄与し続けます。付加価値を生み出し続けるための企業成長はもちろんのことながら、すべてのステークホルダーとともに様々な社会問題の解決へ積極的に取り組み、企業の責任を果たしてまいります。
- 取り組みをご紹介します。
- 自社開発した業務システムによりペーパーレス化を推進
環境に配慮した取り組みとして、以前より社内承認の電子化や、会議室へのモニター設置などにより、ペーパーレスへの取り組みを行ってきました。本年9月には、基幹システムと連動した業務システムが新たに稼働を開始し、電子化されたワークフローが増えたことで、さらにペーパーレス化を加速しています。なお、この業務システムは自社で開発しています。当社にはゲーム開発だけでなく、基幹系システム・情報系システムの開発、インフラの構築など、豊富な技術を持つエンジニアが在籍しています。
- 社会貢献活動を通じて、創業地・京都に「恩返し」
創業地である京都に「恩返しをする」ことをテーマに、社会貢献活動に取り組んでいます。
子供の交通事故防止を推進する活動「京のこどもを守る企画」を支援しているほか、「京都市音楽芸術文化振興財団」や地域密着型のゴルフ大会である「京都レディースオープン」など、文化・芸術やスポーツ関連の振興へも協賛しています。今後も地域や社会に根ざした活動を通して、地域社会とともにより良い社会の実現を目指してまいります。