2023年8月期 特集

2023年8月期 特集
2023年8月期 特集
Q1. 2023年8月期の振り返りをお願いします。
人財への投資や業務効率化への投資を積極的に実施した一方、開発トラブルの防止徹底や開発品質の向上などの取り組みが奏功し、前期比で増収増益を達成しました。

 裏表紙のNEWSにてご紹介しております通り、当社が開発させていただいたゲームが日本ゲーム大賞の優秀賞に選ばれ、当社の開発技術力や開発品質の高さを示すことができたのではないかと考えております。これまで、ハイクオリティな成果が出せる開発体制への進化や企画提案の強化に努めてきたことが、収益力の向上や開発業務の採算改善につながり、結果として連結業績は前期比増収増益と良好に着地し、様々な取り組みが実を結び始めた年となりました。このような事業の堅調な進展を背景に、人財への投資を積極的に実施できたことも、今後の成長への大切なステップとなりました。1月には、急激な物価の上昇に配慮し従業員に一時金を支給、4月にはベースアップによって例年の水準を大きく超える昇給を実現しました。他にも、教育体系の整備を進めたり、一部の開発案件にて、比較的若手の開発スタッフを主要メンバーとして抜擢し、マネジメント力の向上を図ったりするなど、人財育成への取り組みも一層進めることができました。
 一方で、2023年8月期の上期には進行中であった大型の開発案件の中止がありました。当時、他にも多数のご商談が寄せられていたため、中止を受けても期初の業績予想は達成できると考えておりましたが、案件の切り替え等に想定以上の時間を要し、下期に一時稼働が低下してしまい、期初の業績予想は未達となりました。開発中止のような事態をものともせず、安定して業績を拡大していけるよう、総合力を高めるとともに、今後も収益性の一層の向上を図ってまいります。

Q2. トーセの価値創造プロセスと、中長期的に取り組む課題についてご説明ください。
「開発人財の増強」や「開発技術力の継続的な成長、発展」などの、中期的に取り組む6つの課題に注力し、企業価値の増加と資本効率の向上を進めていきます。

 当社グループは44年の歴史のなかで、ディベロッパー専門企業としては質・量ともにトップクラスの人的基盤を構築するとともに、開発品質を支える豊かな技術と知見を、変化の激しい業界のなかで常にアップデートしてきました。ゲームソフトメーカーをはじめ、携帯電話キャリア、モバイルコンテンツ事業者など、幅広いお客さまを開発上流からサポートしてきた開発力と信頼こそ、当社グループにおける価値創造の原点だと考えております。
 当社グループが独自の経済価値、社会価値を創造し続けるためには、強みである開発力を継続して発展させ、その原動力である人的資本を拡充していくことが不可欠です。そして、デジタルエンタテインメント関連に留まらず、他のフィールドでも、当社グループの開発技術を発揮していきたいと考えております。そのために当社グループでは、「開発人財の増強」「開発技術力の継続的な成長、発展」「取引価格の引き上げ」「開発プロセスの効率化、省力化」「新規事業へのアプローチ」「グローバル案件の取り込み推進」の6項目を、中期的に優先して取り組むべき課題と認識し、それぞれの推進にグループの総力をあげて取り組んでいます。

Q3. 2024年8月期の取り組みについて聞かせてください。
2024年8月期には、事業活動を進めるなかで、高度な開発技術の探求や、顧客ロイヤリティの向上による取引価格の引き上げ、また開発人財の拡充のための施策をさらに推進していくことに、注力してまいります。

 2024年8月期の事業環境は、Nintendo Switch™やプレイステーション®5、PC向けを中心に家庭用ゲーム市場が引き続き好調に推移することを見込んでいます。2023年8月期の終盤から立ち上がった複数の大規模な新規の開発案件や、継続して取り組んでいるリリースが迫る開発案件などで、当社グループはほぼフル稼働の状態となっています。それらの開発案件を、クオリティ高く着実に進行させることで、増収増益を目指します。そうした事業活動のなかで、高度な開発技術の探求に努め、また顧客ロイヤリティの向上を軸に取引価格の引き上げを図ってまいります。

Q4. サステナビリティについては、どのような取り組みを進めていますか。
「永遠に続く会社づくり」を経営理念に、サステナビリティを常に経営判断基準のひとつとし、サステナブルな社会の実現に寄与してまいります。

 私たちは、民間企業におけるサステナビリティ(持続可能性)を、単に環境や地域社会に配慮した経営を進めるという狭義の企業活動ではなく、より良い環境・経済・社会の構築に向けて組織や人々が互いを理解しあい、協調していくための行動原理そのものと捉えています。
 自然環境や地域社会との共生などを多面的に考慮するとともに、当社のサステナビリティを向上させるうえで最も注力すべき項目のひとつは、多様性の拡大を含む人的資本の拡充であると考えております。特集にて考え方や取り組みをご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

2023年8月期 特集
人的資本に対するトーセの基本方針
 当社グループの使命である「より良い製品とサービスを社会に提供し、健全で豊かな社会の実現に寄与する」ことを実践するのは、創作意欲にあふれる開発人財です。この使命をより発展させていくためには、源泉である開発人財を拡充することが不可欠です。開発人財とともにコーポレート部門の人財も人的資本と捉え、資本の増大と資本効率の最大化を進めることが、当社グループの成長戦略の要のひとつです。

 人的資本の増大と効率化のために、従業員数を安定して増加させ多様性を拡大する量的アプローチと、従業員一人ひとり及び組織としてのパフォーマンスを向上する質的アプローチの両面から、取り組みを続けています。
Case1 ゲーム開発に相応しい、風通しのよいフラットな職場の実現
ゲーム開発は日々目まぐるしく進化しているため、新しいアイデア、多様な意見、率直な議論、高い専門性、スピード感などが欠かせません。従来のピラミッド型組織では、権限が集中していたことや、意思決定プロセスが複雑であったことから、それらが活かしきれない状況にありました。そこで、開発プロジェクトを統括するプロジェクトマネジャーを中心に、プロジェクトを主体として組織を構成し、複数のプロジェクトチームを抱えるスタジオ制に転換しました。風通しのよいフラットな組織では、若手従業員も意見を発信しやすく、多様性が生まれやすくなります。
Case2 教育制度・評価制度・報酬制度を一体とした改革
従業員一人ひとりにマッチした教育機会を提供し、身に付けた技術が適正に評価され、その評価が報酬に反映されるような仕組みへと、改革を行いました。納得度の高い待遇を得たことで、次のスキルアップへのモチベーションとなり、また次の技術を身に付ける、という好循環を作り出すことが、従業員の自律的な成長において重要であると考えています。技術やトレンドの変化の激しいデジタルコンテンツ業界において、従業員の成長を促す風土が整っていることは、企業成長にとって必須です。今後も、実態に即して制度内容をブラッシュアップし、トーセと従業員がともに成長していける環境を提供し続けます。
Case3 従業員エンゲージメントを高める取り組み
従業員が、自分の職場の推奨度を回答するアンケート調査(eNPS調査)を導入し、職場環境に対する評価を毎年行っています。その調査で、推奨度に大きく影響を与えている項目を把握し、影響の大きいものから順番に対策を行っています。